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愛や恋から遠ざかってどのくらいたつだろうか。なんて考える俺は、もしかしたら相当な自己陶酔者なのかもしれない。
高校までで、嫉妬や孤独感、焦燥感が生み出す対人関係においての面倒なことは、一通り経験してきたと思う。相手が男でも、女でも。もちろん、加齢に伴って対人関係の揉め事の種類や傾向も変わってくるとは思う。しかし、一々揉めるのが馬鹿らしいと感じるほどに、人間の醜い本能に起因するいざこざにうんざりしていたことだけは事実だった。
俺たちは、もう大人だ。だから、大学ではうまくやっていけるように努力している。なんでもごまかしが利くように、上手く隠して、ぼかして、そして相手に気を使って。自分でもうまくいっている確信、そして自信があった。
ふわふわ、ふわふわ。それが、大人の男の余裕にでも見えたのだろうか。




『ヒロくん、今日の飲み会、行く?』
昼が過ぎ、一日の勤務を終えた太陽が西の空へ隠れる頃。ようやく昨晩の酒が抜けた俺は、ベッドから這い出ると、枕元の携帯を開いた。
送信元はユウコだった。サークルの同級生。絵文字を使って愛らしくデコレーションされたそれに、気だるい親指で返事を打つ。
『サークルの飲みは久しぶりだから行こうと思うよ』
本来ならば『行く』の二文字で終わらせたいところだが、意図的に長めに作成したメールに送信ボタンを押して、身仕度を始める。顔を洗い終えた頃、携帯の振動が机を鳴らした。
『そっか。じゃあ会えるね。途中で抜け出しちゃおっか?』
可愛い誘惑をけしかけてきたそれを読み、頬を掻いた。洗いたてのシャツに袖を通して、携帯を充電器から外した。
イエスともノーとも言わない僕の態度に、君は、魅力を感じているのだろうか。だとしたら、僕は君を少し軽蔑してしまうかもしれない。




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