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店の外は大通りで、隣に小さな駐車場がある。彼女は、従業員の通用口の隣の自販機でタバコを買って、火を点けていた。ライターに照らされ、彼女の顔が一瞬浮かび上がる。闇夜に映える、白い肌。朱を交えているように見えるのは、酔いのせいなのか。
「お味はどうだった?」
ひとみは、タバコをくわえながら言った。
「は?」
「キスのお味」
彼女の顔を覗き見る。俺になんか目もくれず、空を仰いでいた。
「…お前、見てたの?」
彼女は答えない。変わりにふー、と、長い煙を吐いた。俺は白々しく頭を掻くふうにして、
「ハハハ…いや〜、粗相のないところ見られちゃったわvどうしましょう、あたし、お嫁にいけないっ」
冗談めかした俺の言葉に、彼女は無反応どころか、むっとしたように言った。
「よかったね」
「なにが」
俺は問い返す。彼女は、吐き捨てるように乱暴に言った。
「ユウコと付き合ってんでしょ」
彼女の言葉に、震えるような動揺を隠すように、ひょいと肩をすくめた。
「あらら。お前も知ってるの。本人から聞いた?」
「見てればわかるよ。ユウコ、前からヒロくんのこと好きっぽかったし」
時々、女性の観察眼と勘に、俺は本気で敬服する。男だったら、絶対気づかない。そんなこと。
それとも、女性の観察眼うんぬんは別として、

『お前かユウコのこと、よく見てる奴は知ってんじゃない?例えば俺とか☆』

俺のこと、見てたのだろうか。

「よかったじゃん。ユウコ、いい子だし、かわいいもんね。さっきもまんざらでもない感じだったし」
早口気味にまくしたてるひとみに、俺は若干眉根を寄せた。
「お前、どうしたんだよ。今日やたらと突っかかってくんね。酔ってんの?」
「酔ってない」
煙を吐きながら、やはり怒ったように言う彼女。
本当にタバコの似合わない。彼女の喫煙する姿は、何故だろう、いつも俺をいらつかせる。
「うちのサークルの飲み会でチュッチュチュッチュすんのなんて、わりと普通じゃん。今更何言ってんの」
「ヒロくんにとっては普通だって、私は一回もないし。そんなの岡部くんと竹村さんあたりに男同士でやらせとけばいいんだよ。ヒロくんまでデレデレしちゃって。ユウコもユウコでさ。もう、みんな、馬鹿じゃないの?」
ひとみの言葉に、俺はイラつきを交えながら言う。
「デレデレなんかしてねえよ。ユウコ、なんかあったんだろ。いくらバッファローコンビに飲まされたって言ってもあいつは分別ってもんを知ってるやつだよ。あんな風になるまで飲むのはだいたい嫌なことがあったときくらいだろ。きっと友達関係かなんかで…」
「ヒロくんのせいだよ!」
ひとみが急に叫んだ。俺はぎょっとした。




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